LCM(ライフサイクルマネジメント)とは?IT資産の管理運用の課題とサービス選定のポイントを解説
ビジネスに欠かせないPCやスマートフォンなどのIT資産は、導入から運用、そして廃棄に至るまで適切な管理が必要です。しかし、社内の情報システム部門(情シス)が少人数の場合、全てのIT資産を把握・管理するのは大きな負担となります。特に近年はリモートワークの普及により従業員一人あたりが利用するデバイスの種類や数が増え、管理業務はますます複雑化しています。
その解決策として注目されているのが、IT資産をライフサイクル全体で統合的に管理する「LCM(ライフサイクルマネジメント)」です。LCMを活用すれば、IT資産管理の効率化やコスト削減、セキュリティ強化など多くのメリットが期待できます。
本記事では、LCMの定義や対象となる資産から、具体的な管理のプロセス、導入メリット、注意点、そしてサービス選定のポイントまで、IT資産管理の基本をわかりやすく解説します。
目次[非表示]
- 1.LCMとは何か?IT資産管理の基本を解説
- 2.ライフサイクル管理の4つのプロセス
- 3.なぜLCMが必要?IT資産管理の3つの課題
- 3.1.人材不足と情シス負担の限界
- 3.2.管理工数・コストの増大
- 3.3.セキュリティリスク・コンプライアンス対応
- 4.LCM導入の3つのメリット
- 5.LCM導入の3つの注意点
- 5.1.1.導入コスト・運用費用の増加に注意
- 5.2.2.最適なサービス選定が難しい
- 5.3.3.全ての企業に有効とは限らない
- 6.LCMサービス選定で失敗しないためのポイント
- 6.1.サービスの対応範囲が自社ニーズに合っているか
- 6.2.細かな要望に柔軟に応えてくれるか
- 6.3.サポート体制や実績は十分か
- 7.LCMサービスの導入でIT資産管理の負担を減らそう!
- 8.LCMサービスならUTORITO
LCMとは何か?IT資産管理の基本を解説
LCMの定義と意味
LCMとは「Life Cycle Management(ライフサイクルマネジメント)」の略で、IT資産の調達から廃棄まで全てのプロセスを一貫して管理する手法やアウトソーシングサービスを指します。企業内のPCやスマートフォン、タブレットなどのデバイスを、導入から運用、そして不要になった際のデータ消去・処分に至るまで統合的に管理するのがLCMの特徴です。多くの場合、専門業者による「LCMサービス」という形で提供され、デバイスの選定やキッティング、保守サポート、廃棄・リサイクルまでを包括的に代行してもらうことができます。このようにLCMを活用すれば、IT資産管理の抜け漏れを防ぎつつ、社内の管理負担を大幅に軽減できるのです。
対象となるIT資産
LCMで管理の対象となる「IT資産」には、企業が業務で使用するさまざまな情報機器が含まれます。例えば、従業員に支給されるパソコン(デスクトップ、ノートPC)やスマートフォン、タブレット端末は代表的です。これに加えて、プリンターやスキャナーなどの周辺機器、社内ネットワークで使用する無線LANアクセスポイントやルーターなどの通信機器、さらにはオフィス内のサーバーやストレージ機器まで、幅広いIT機器が対象になります。要するに、企業内で導入から廃棄までライフサイクル管理を必要とするあらゆるハードウェアがLCMの範囲に含まれると考えてよいでしょう。
ライフサイクル管理の4つのプロセス
企業のIT資産は、その導入から最終的な処分・回収まで、一連のライフサイクルを辿ります。LCMではこのライフサイクルを「調達」「導入」「運用・保守」「廃棄・返却」の4つのプロセスに分類し、それぞれの段階で適切な管理を行います。
調達
まず「調達」フェーズでは、企業が必要とするIT機器を選定します。利用部門の要件や予算に応じて、適切なスペックのPCやモバイル端末を決めて発注を行います。自社で直接購入するケースもあれば、LCMサービスを利用して専門家のアドバイスのもと最適な機種を選んでもらうことも可能です。
また、サービス提供企業によっては新品の購入だけでなく、リースやレンタルでの調達に対応してくれる場合もあります。これにより、一度に多額の設備投資をすることなく最新のIT機器を導入できるメリットも生まれます。
導入
「導入」フェーズでは、調達したデバイスを実際に社内で使える状態にセットアップします。具体的にはPCやスマホに必要なOSやソフトウェアをインストールし、社内ネットワークやセキュリティポリシーに沿ったキッティングを施します。新規導入だけでなく、既存端末からのデータ移行が必要な場合は、利用者のファイルや設定を新しいデバイスへ移す作業も含まれます。
複数の端末を一括導入する際には、マスターPC(ひな型となる端末)のイメージをクローニングすることで効率的にキッティングを行うことが可能です。このマスターイメージの作成や大量設定作業には高度な知識と手間がかかるため、専門サービスにアウトソーシングすることでスムーズな導入が期待できます。
運用・保守
「運用・保守」フェーズでは、配備したIT機器を日常的に安定して使えるようサポートします。具体的には、従業員からの問い合わせに応じるヘルプデスクの設置や、不具合が起きた際のトラブルシューティング、修理対応などが含まれます。IT機器の利用状況を継続的に把握し、必要に応じて部品交換やスペックの増強を行うことで、長期にわたり安定運用を実現します。
また、こうした運用業務をLCMサービスにアウトソーシングすれば、社内のIT担当者は本来のコア業務に専念することができます。
廃棄・返却
最後の「廃棄・返却」フェーズでは、IT機器を安全かつ適切に処分します。まず、デバイス内に保存されたデータをバックアップしたうえで、ハードディスクやストレージの内容を完全に消去します。個人情報や機密情報が残ったままデバイスを廃棄すると情報漏えいや不正利用の恐れがあるため、復元不可能な形で確実にデータを消去することが重要です。データの削除が完了したら、リース品であればメーカーへ返却し、自社所有品で不要なものは適切な産業廃棄物処理やリサイクル業者への引き取りを依頼します。こうした廃棄プロセスまで徹底することで、コンプライアンス遵守とセキュリティ確保が実現可能となります。
なぜLCMが必要?IT資産管理の3つの課題
では、なぜ今LCMが必要とされているのでしょうか。その背景には、従来のIT資産管理におけるいくつかの課題が存在します。情報システム担当者の声を聞くと、以下に挙げるような3つの課題に直面しているケースが少なくありません。
人材不足と情シス負担の限界
まず挙げられるのが、IT人材の不足と情シスの負担増大です。近年、多くの企業でIT人材不足が深刻化しており、社内に十分な専門スタッフを確保することが難しくなっています。ある調査では約75%の企業が情シス人員の不足を感じているとの結果もあり、対策として約3割の企業が外部サービスの活用を検討しているというデータも報告されています。特にPCや社用スマートフォンの台数が増える大企業では、本来なら多数の担当者が必要ですが、人員が足りないため一人ひとりの負担が肥大化しがちです。
また、中小企業の場合、専任のIT資産管理者がおらず総務や別部門と兼任していることも多く、通常業務と管理業務の両立で限界が生じがちです。情シス担当者が少人数で全社のIT資産を抱える状況では、対応しきれないトラブルや管理漏れが発生するリスクも高まります。
管理工数・コストの増大
次に、IT資産管理にかかる手間やコストの増大も大きな課題です。管理すべきPCの台数が増えるほど、台帳管理や棚卸し、更新作業などに費やす工数が膨れ上がります。また、社員の入社・退社のたびに貸与デバイスの増減や入れ替えが発生し、リース契約の期限管理や保守費用の調整など、管理担当者には継続的な対応が求められます。
このように、IT資産管理は範囲が広く複雑なため、人手で行う場合は属人化やミスも起こりやすく、結果として想定以上の時間や労力を要することになりがちです。
実際、Excelでの資産台帳管理では台数が増えすぎると対応しきれず管理が煩雑化するという声もあります。そうした状況では未使用のデバイスや余分なソフトウェアライセンスに気づかず放置してしまい、無駄なコスト支出につながる恐れもあります。
セキュリティリスク・コンプライアンス対応
さらに、セキュリティ面やコンプライアンス対応のリスクも見逃せません。管理が行き届いていないデバイスには、古いOSや未更新のソフトウェアが残ったまま利用されているケースがあり、脆弱性を突かれてウイルス感染やサイバー攻撃を招く恐れがあります。
また、社員が退職した後にデバイス内の機密データが消去されず放置されたり、資産管理台帳から漏れて所在不明のデバイスが存在したりすると、情報漏えいや不正利用といった深刻な問題につながります。とりわけ廃棄時のデータ消去を怠れば重大なコンプライアンス違反となり得るため、IT資産管理には高度なセキュリティ対策と厳格な運用ルールが求められます。万一情報漏えい事故が起きれば多額の損害賠償や企業信用の失墜にもつながるため、IT資産管理の不備は経営リスクにも直結します。
LCM導入の3つのメリット
では、LCMを導入するとどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、企業がLCMを活用することで期待できる主なメリットを3つ紹介します。これらは前述の課題に対する具体的な解決策にもなりうるポイントで、IT資産管理の現場で大きな効果を発揮します。
1.IT人材不足解消でコア業務に集中
1つ目のメリットは、限られたIT人材をコア業務に集中させられることです。LCMではPCのキッティングやトラブル対応など煩雑な管理業務をアウトソーシングしたり自動化したりできるため、情シスの負担が大幅に軽減します。
結果として、社内のIT担当者は本来取り組むべきシステム企画やDX推進などの戦略的業務に専念できるようになります。人手不足で対応が後回しになっていた課題にも余力を割けるため、IT部門全体の生産性向上にもつながるでしょう。
2.ライフサイクル全体でコスト削減・最適化
2つ目のメリットは、IT資産のライフサイクル全体でコスト削減と費用最適化が図れることです。専門人材を新たに雇用・育成せずに済むため、人件費や教育コストを抑制できます。
また、LCMにより社内のIT機器やソフトウェア資産を一元管理すれば、使われていないハードウェアや不要なライセンスを洗い出して無駄な支出を削減可能です。
さらに、リース契約の期限やメーカー保証の切れ目を見逃さず管理できるため、契約更新漏れによる高額な修理費や延滞料金の発生を防ぎ、常に費用対効果の高い運用が実現します。多くのLCMサービスは月額料金制のためコストが平準化し、予算管理がしやすくなる利点もあります。
3.セキュリティ強化と情報漏洩リスク低減
3つ目のメリットは、セキュリティ体制の強化と情報漏えいリスクの低減です。LCMサービス事業者にIT機器の管理を任せることで、全端末に統一したセキュリティ設定を適用でき、古いOSや未更新ソフトによる脆弱性リスクを回避できます。
また、各デバイスの利用状況を監視できるため、ソフトウェアのライセンス違反や不正な持ち出しなどコンプライアンス上の問題も未然に防げるでしょう。特にデバイスを廃棄する際には、確実なデータ消去が実施されるため、廃棄漏れのデータから機密情報が流出してしまう心配もありません。
このように、LCMを導入することでセキュリティ対策の水準を全般的に引き上げることができるのです。
LCM導入の3つの注意点
メリットも多いLCMですが、導入にあたって注意すべき点もあります。自社にとって本当に有効に活用できるかを見極めるために、以下の三つの注意点を押さえておきましょう。
1.導入コスト・運用費用の増加に注意
まず、LCM導入によるコスト増加には注意が必要です。IT資産管理の全工程をアウトソーシングするLCMサービスは、その広範な対応範囲ゆえに一般的な部分委託より費用が割高になるケースがあります。月額料金や初期導入費用が発生するため、短期的には社内で運用するよりコストが増える可能性も考慮しなければなりません。もちろん、LCMによって長期的なコスト最適化が見込めるとはいえ、自社の規模や資産台数に対して費用対効果が合うかを事前に精査することが重要です。
2.最適なサービス選定が難しい
次に、自社に合ったLCMサービスを見極めるのが難しい点も挙げられます。提供会社によって代行してくれる業務範囲や得意分野が大きく異なり、一見似たサービスでも内容や品質には差があります。例えばセキュリティ対策を強化したいのに、選んだサービスがキッティング中心でセキュリティ面のサポートが手薄だったということになれば、期待した効果は得られません。自社の課題に合致した最適なサービスを選定するには、複数の候補を比較して慎重に検討する必要があります。
3.全ての企業に有効とは限らない
そして、LCMが全ての企業にとって万能な解決策とは限らない点にも注意が必要です。ライフサイクル管理のアウトソーシングは基本的に包括的なサービスであり、企業規模やIT機器の量によっては「そこまで手厚い管理は必要なかった」というケースもあり得ます。
また、すべての管理業務を外部に任せることで、IT資産運用のノウハウや知識が社内に蓄積されにくくなるという側面も指摘されています。特に保有するPC台数が少ない企業や、既に社内体制が整っている企業では、LCMサービスを導入してもコストに見合う十分なメリットを得られない可能性があります。そのため、自社の状況を踏まえて、本当にLCMが必要かどうかを慎重に見極めることが大切です。
LCMサービス選定で失敗しないためのポイント
最後に、LCMサービスを選ぶ際に失敗しないためのポイントを確認しましょう。多くの事業者が様々なLCMサービスを提供しているため、どれを選ぶかによってその後の効果は大きく変わります。自社に最適なサービスを選定するために、以下のポイントをチェックしてみましょう。
サービスの対応範囲が自社ニーズに合っているか
まず、各サービスの対応範囲が自社のニーズに合っているかを確認しましょう。LCMサービスによって得意分野は様々で、PCの管理に特化したものもあれば、スマホ・タブレットからプリンター、ネットワーク機器まで幅広くカバーできるものもあります。自社で使っているIT機器の種類やOS(WindowsかmacOSか等)にそのサービスが対応しているか、また台数増減への柔軟さやIT機器のリース提供に対応しているかなど、具体的なニーズとのマッチ度をチェックしましょう。自社資産を一覧に洗い出し、「この種類のデバイス管理は任せたい」「ここは自社でやりたい」といった希望に沿って、候補サービスの対応範囲を比較することが大切です。
細かな要望に柔軟に応えてくれるか
次に、提供事業者がこちらの細かな要望に柔軟に対応してくれるかも重要です。企業によっては「必要な時だけPCを短期レンタルしたい」「どの機種を選べばよいか相談したい」など特殊なニーズがあるでしょう。そのような声に柔軟に応えてくれるサービスであれば、自社に合わせた最適なIT環境を構築できます。
また、標準的なメニューにない作業(独自ソフトのインストールや特殊設定など)にも対応可能か、契約内容をカスタマイズできるかといった点も比較検討しましょう。自社の細かいリクエストに耳を傾けてくれるパートナーであれば、導入後のミスマッチを防ぎやすくなります。
サポート体制や実績は十分か
そして、サービス提供企業のサポート体制や実績も見逃せません。導入後に故障やトラブルが起きた際、迅速かつ的確に対処してもらえるかどうかは非常に重要です。ヘルプデスクの受付時間帯や専任担当の有無、トラブル発生時の現地駆けつけサービスがあるかなどを事前に確認しておきましょう。
また、実績豊富なサービスであれば過去の導入事例や利用企業の声が公開されていることも多いため、そうした情報も参考になります。自社と同規模・同業種の企業での採用実績やサポート評価をチェックすることで、サービス選定の判断材料となるでしょう。長年にわたり多くの企業のIT資産管理を支援してきた実績があるプロバイダーなら、安心して任せられます。
LCMサービスの導入でIT資産管理の負担を減らそう!
LCMを活用することで、複雑化するIT資産管理の負担を大幅に軽減し、本来注力すべき業務に集中できる環境を整えることができます。人手不足やコスト増、セキュリティリスクといった課題に悩んでいる企業にとって、LCMは強力なソリューションとなり得るでしょう。
もちろん、自社に適したサービスを選び、費用対効果を見極めることは必要ですが、条件が合えばLCM導入によるメリットは非常に大きいはずです。ぜひこの機会に、自社のIT資産管理を見直し、LCMサービスの導入による負担軽減を検討してみてはいかがでしょうか。
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