IT資産管理の必須項目と台帳テンプレート完全ガイド【2025年版】
IT資産が多様化し、クラウドサービスやモバイル端末が急増する現在、資産情報を点在させたままでは重複購入やライセンス違反、セキュリティインシデントのリスクが高まります。
本記事では、IT資産管理で必ず押さえるべき10項目と台帳テンプレートの作成手順を整理し、ハード・ソフト・契約の三層で資産を可視化する方法を解説します。情シスや総務部門の実務に即した運用ポイントを示し、2025年以降求められる内部統制・監査対応にも耐えうる台帳整備を目指します。
目次[非表示]
- 1.IT資産管理とは?目的と最新動向
- 1.1.IT資産の定義と範囲
- 1.2.2025年に注目される課題
- 2.IT資産管理すべき3大カテゴリと必須項目一覧
- 2.1.ハードウェア資産(PC・サーバーなど)
- 2.2.ソフトウェア/クラウドライセンス
- 2.3.契約・サブスクリプション情報
- 3.IT資産管理台帳に記載が必須の10項目
- 3.1.管理番号
- 3.2.資産種別
- 3.3.資産名(メーカー/型番)
- 3.4.所有・管理部門
- 3.5.担当者(利用者)
- 3.6.設置場所
- 3.7.購入日
- 3.8.購入価格
- 3.9.保守サポート期限
- 3.10.ライセンス契約情報
- 4.IT資産管理台帳テンプレートと記録フォーマットの作り方
- 4.1.Excelテンプレートの項目例
- 4.2.自動収集ツールとの連携方法
- 5.IT資産管理の項目整理と実践への第一歩を踏み出そう
IT資産管理とは?目的と最新動向
IT資産の定義と範囲
IT資産管理とは、企業内のすべてのIT資産(パソコン、サーバー、スマートフォン、ネットワーク機器、ソフトウェア、クラウドサービスなど)の情報を一元的に把握し、ライフサイクル全体で適切に管理する取り組みです。ハードウェアから無形のソフトウェアライセンス契約まで、社内で利用・保有しているあらゆるIT関連資産が管理対象に含まれます。
これにより、IT資産の利用状況や契約情報を把握して重複購入の防止やセキュリティ強化、コンプライアンス遵守といった目的を達成できます。特に誰がどの資産を使っているかを明確にすることは、内部統制や監査対応の面でも重要です。
2025年に注目される課題
近年の動向として、リモートワークの定着やクラウドサービス(SaaS)の急増により、従来のExcel台帳による手作業管理は限界を迎えつつあります。社外から利用されるデバイスも増え、リアルタイムに資産状況を可視化してセキュリティを確保することが求められています。
また、各部門でSaaSを導入するケースが飛躍的に増えた結果、アカウントや契約情報の棚卸し(いわゆるシャドーITの把握)が新たな課題となっています。さらに、情報セキュリティや内部統制の観点からもIT資産台帳の重要性は高まっています。実際、ISMSなどセキュリティ認証の取得や内部監査では網羅的なIT資産管理台帳の提出が求められるため、早めの整備が必須です。
IT資産管理すべき3大カテゴリと必須項目一覧
ハードウェア資産(PC・サーバーなど)
ハードウェア資産には、PCやノートパソコン、サーバー、プリンター、ネットワーク機器、社用スマホなどの物理デバイスが含まれます。これらは台数も多く調達コストも大きいため、利用状況を把握して適切に配備することで、遊休機器を減らし無駄なコストの発生を防ぐことができます。
また各端末のパッチ適用状況など脆弱性情報を管理し、アップデート漏れによるセキュリティリスクを低減することも重要です。例えば紛失・盗難時の所在追跡や老朽化した機器の計画的リプレースなど、ハード資産の徹底管理は安全で効率的なIT運用の土台と言えるでしょう。
ソフトウェア/クラウドライセンス
ソフトウェア資産には、PCにインストールされたソフトウェア製品や各種クラウドサービス(SaaS)の利用アカウント・ライセンスが該当します。各部門が独自にクラウドサービスを契約すると、重複したライセンス契約や未使用アカウントが発生して無駄なコストが増大しがちです。
さらに、シャドーIT(IT部門が把握していない無許可のクラウド利用)や退職者アカウントの削除漏れはセキュリティ上の穴となり、情報漏洩リスクを高めます。加えてソフトウェアの利用状況を管理せず規約を超えた使用をしてしまうと、ライセンス違反による法的トラブルや企業信用リスクにも繋がりかねません。
契約・サブスクリプション情報
IT資産に関連する各種契約やサブスクリプション(保守サポート契約、機器リース契約、クラウドサービス利用契約など)も重要な管理対象です。ハードやソフトと違い契約情報は目に見えないため、更新時期の見落としによるサポート切れや契約失効が起こりやすい点に注意が必要です。
契約先・契約期間・契約金額・自動更新の有無など契約内容を台帳に記録し、更新期限前に通知・見直しを行う運用により、更新忘れによるサービス停止や余計なコスト発生を未然に防げます。
IT資産管理台帳に記載が必須の10項目
IT資産管理台帳を作成する際は、以下の10項目は最低限盛り込むことをおすすめします。基本情報を網羅しておくことで、資産状況を誰でも把握しやすくなり、管理漏れの防止につながります。
管理項目 |
意味・記載内容 |
リスク低減/運用メリット |
---|---|---|
管理番号 |
資産に付与する一意のID(ラベル貼付推奨) |
現物との照合が容易になり、棚卸し漏れや重複登録を防止 |
資産種別 |
PC・サーバー・モバイル・SaaS などカテゴリー区分 |
種別ごとに更新・廃棄ポリシーを設定しやすい |
資産名(メーカー/型番) |
製品名・モデル番号・バージョン |
保守対応の迅速化、部品・ライセンス適合性の確認に有効 |
所有・管理部門 |
購入・運用を管轄する部署 |
費用配分の明確化、問い合わせルートの明示 |
担当者(利用者) |
実際の利用者または管理責任者 |
異動・退職時の回収漏れ防止、責任所在の明確化 |
設置場所 |
オフィス・ラック番号・持ち出し状態など |
紛失時の追跡、災害時の被害範囲の迅速把握 |
購入日 |
取得・リース開始日 |
減価償却計算、更新計画・保証範囲の判断に活用 |
購入価格 |
取得コストまたはリース料 |
IT予算の精度向上、資産価値の可視化 |
保守サポート期限 |
保証・保守契約の満了日 |
サポート切れによるダウンタイムや高額修理の回避 |
ライセンス契約情報 |
契約ライセンス数・有効期限・契約形態 |
ライセンス超過・違反リスク回避、更新コスト最適化 |
IT資産管理台帳テンプレートと記録フォーマットの作り方
Excelテンプレートの項目例
Excelで台帳を作成する場合、前述の必須10項目を列見出しとして設定します。その上で、自社の運用に合わせて必要な項目を追加しましょう。例えばセキュリティ対策を徹底したい場合、各端末のOS種別・バージョンやインストールソフト、IPアドレス、端末ごとのシリアル番号などを列に加えると効果的です。逆に不要な情報は無理に盛り込まず、シンプルで更新しやすいフォーマットにすることも重要です。
また、資産管理番号の付与ルール(例:「PC-001」「SV-001」のように種別ごとに通し番号を振る等)をあらかじめ決めておき、そのルールに沿って管理番号を振るようにすると、台帳上で資産を識別しやすくなります。
自動収集ツールとの連携方法
Excel管理の効率化には、IT資産管理ツールの活用も有効です。エージェントによる自動インベントリ収集機能を使えば、各端末のスペックやインストールソフト、適用パッチ状況まで定期的に収集され、常に最新の資産情報が台帳に反映されます。
こうして得たデータを台帳に取り込んで手更新の頻度を減らしたり、台帳自体をツール上で一元管理すれば、人的ミスや情報漏れを大幅に削減できます。クラウドサービス(SaaS)の利用状況もツール経由でアカウント情報を自動取得することで、シャドーITの可視化やライセンスの適正管理に役立ちます。
IT資産管理の項目整理と実践への第一歩を踏み出そう
ここまで、IT資産管理の目的や重要な管理項目について見てきました。あとは実際に自社のIT資産台帳を整備し、運用を開始するのみです。まずはExcelなどで資産一覧を作成し、今回紹介した必須項目を一つずつ埋めてみましょう。
台帳を“見える化”することで、どの資産がどこで誰に使われているかがひと目で分かり、重複購入の無駄やセキュリティリスクを防ぐ効果が期待できます。管理対象が膨大で手作業が困難な場合は、IT資産管理ツールの導入や専門のアウトソーシングサービス(IT資産のライフサイクル管理代行)の活用も検討すると良いでしょう。重要なのは、自社に合った方法でまず一歩を踏み出し、IT資産管理の運用を継続して改善していくことです。